no.28

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28高麗
青磁象嵌菊花文盃・盃台

12~13世紀
H. 6.8cm D. 7cm(盃)  H. 6.5cm D. 12.5cm(盃台)
来歴:勝田主計(朝鮮銀行総裁)
平福百穂(日本画家)
秋田県内某蒐集家

A Celadon Cup and Stand
with inlaid chrysanthemum design.

Goryeo dynasty,
12th-13th century
Provenance: Kazue Shouda (The President of Chosen Bank)
Hyakusui Hirafuku (Painter)
Japanese Private Collector



 高麗青磁独特の象嵌技法が成熟期を迎えた12世紀中葉から13世紀前半にかけての作品である。

青磁の釉調は、かすかに緑色を帯びた灰青色で、滑らかさを感じさせる光沢がある。

 盃は口縁部が輪花状になり、胴部も花を思わせる造形となっている。

10枚の花弁には菊の花が3輪ずつ白黒象嵌されている。花弁の柔らかな曲線と高台の広がりが典雅な趣を生み出しており、高麗時代の貴族文化にふさわしい優品である。

 盃台の立上り部には二重連弁文が力強く陽刻され、見込みには波状文が陰刻されており、それぞれの装飾技法が楽しめる。

その高台は通常の2倍ほどの高さを有しており、盃と盃台を重ねると、全体として堂々とした印象を生み出している。


 作品を収めた桐箱の蓋の表には「高麗 青磁象眼 菊盃」の墨書、裏には「贈呈 平福百穂画伯 丙辰初夏 勝田宰州」の墨書があり、「白田舎蔵」の朱文方印が捺されている。

 平福百穂(1877-1933)は、秋田県の角館出身の日本画家で大正から昭和初期に活躍した。

「白田舎蔵」は百穂の所蔵印。

箱書きをした勝田主計(1869-1948)は、愛媛県の松山出身で、同郷の俳人・正岡子規や海軍軍人・秋山真之の友人である。

「宰州」は勝田の俳号。勝田は大蔵官僚として活躍し、大正4年(1915)朝鮮銀行総裁に就任、その後も大蔵大臣、文部大臣などを歴任した。

「丙辰」の干支は大正5年(1916)にあたり、勝田は朝鮮銀行総裁在任中である。

 箱書きの内容から、この高麗青磁の優品は、朝鮮銀行総裁だった勝田主計から、当時の高名な画家平福百穂に贈呈されたことがわかる。

百穂は同年5月朝鮮に渡り、6月には京城で個展を開催しており、勝田から直接受贈した可能性が高い。

百穂は翌年(1917)12月、大正天皇の伏見宮邸行幸の折に「高麗献馬」図を御前揮毫している。

 その後、百穂の後援者で竹久夢二も逗留したことのある秋田県内の素封家に伝わってきた。






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